WISC の成人版、Wechsler Adult Intelligence Scale (WAIS) 、日本語ではウェクスラー成人知能検査と呼ばれています。WAIS は16歳から90歳の方までが受けられる知能検査です。
高校生の時に学校からディスレクシアの診断を勧められた場合、多くの人が WISC ではなく WAIS を取ることになるでしょう。現在は、2008年に出版された WAIS-IV が使用されています。新しい WAIS-V は2021年に更新される予定です。
WISC のように、全検査IQ (Full Scale Intelligence Quotient - FSIQ) は、全てのカテゴリーの平均スコアです。日本語版 WAIS-IV ではまだ実用化されていないのですが、一般知識能力指数 (General Ability Index - GAI) とは、言語理解指標 (VCI) と知覚推理指標 (PRI) のサブテストの平均スコアです。この一般知識能力指数 (GAI) は、ワーキングメモリー (WMI) や処理速度指標 (PSI) に極度な障害がある方のためにもっと公平な点数を出すためのものとして使われています。
WAIS-IV の4つのカテゴリーは、 WISC-IV と同様です。
Verbal Comprehension Index (VCI) → 言語理解指標
Perceptual Reasoning Index (PRI) → 知覚推理指標
Working Memory Index (WMI) → ワーキングメモリー
Processing Speed Index (PSI) → 処理速度指標
合計で10のサブテスト(基本検査)があります。基本検査は以下のとおりです。
言語理解指標 (VCI) → 類似、単語、知識
知覚推理指標 (PRI) → 積木模様、行列推理、パズル
ワーキングメモリー (WMI) → 数唱、算数
処理速度指標 (PSI) → 記号探し、符号
ここでみなさんに覚えていただきたい事は、カテゴリーの点数が低かったとしても頭が悪いのではありません。「学習障害」と一言で表すと、悪いイメージをもたれる方も多いと思います。でも、学習障害とは学問で必要な読み、書き、数学が全く分からないのではありません。学習障害とは、脳の中のニューロン達のコミュニケーション方法が少し違うだけなのです。
2018年には、World Economic Forum (世界経済フォーラム) が発行した The Future Jobs Report 2018 (仕事の未来) の12ページには、2022年度に職場で必要とされるスキルと必要度の低いスキルが書かれています。必要とされるスキルのほとんどがディスレクシアの強みなのです。例えば、クリエイティブ・シンキング、問題解決方、リーダーシップスキル、分析的思考、などと文字を使わないスキルが必要とされます。代わって、必要度の低いスキルは、マニュアル・エントリー、記憶力、読み、書き、数学。なんと、ディスレクシアの人たちが大変な思いをする分野がそれほど必要とされなくなり、得意とする事が必要とされてくる未来なのです!
左から
Today, 2018→2018年に職場で必要とされるスキル Trending, 2020→2022年に職場で必要とされるスキル Declining, 2020→2022年に職場で必要とされなくなるスキル
2019年には、Ernst & Young (アーンスト・アンド・ヤング) が発行した The Value of Dyslexia (ディスレクシアの価値) の19ページには、2022年に職場で必要とされるスキルと必要されなくなるスキルのグラフが乗っています。
左から
●卓越したスキル
●とても得意なスキル
●得意なスキル
●不得意なスキル
ディスレクシアのお子様をお持ちのお父さんお母さん方へ、学生時代は色々大変だと思います。けれども、彼らはいつか大人になり自分で自分を支える事ができるようになります。将来彼らが自立できるように、今何をしなければならないのか、どのようなサポートがあるのかを探してあげましょう。第一に、彼らの得意とすることを見つけて、それを沢山させてあげてください。
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